最近日本の企業は海外進出しているね。
海外赴任になる人も多いそうよ。
そうだね。ねこさんも行ってみたい?
もちろん!でも、急に海外に行くことになったら焦るわね。
それじゃ、海外赴任の経験者にどんなふうに準備したのか聞いてみよう!
海外赴任は飛躍のチャンスです。
行ったこともない外国に赴任することになったら、やっぱり慌てますね。
言葉は通じるか、うまく生活できるのか、不安がいっぱいです。
かなり前になりますが、私は海外研修が決まった夫について、生まれたばかりの乳児の長男を連れてイギリスに行き、1年間生活しました。
大変だったこと、困ったことはたくさんありましたが、それを帳消しにできるほどの貴重な体験をすることができました。
ここでは、私のささやかな経験を紹介します。
これから海外赴任をする人やその可能性がある人達の参考にしていただけたらとても幸いです。
海外赴任が決まって準備したこと
国内の転勤と違って、海外赴任の場合は急に決まって二週間後に出発ということはまずありません。
少なくとも、半年ぐらい前から「○○に行ってもらいたいので準備をするように。」と言われます。
ある程度の準備をする必要があるからです。
私の場合は1年ほど前に渡英が決まっていたので、その間にできるだけの準備をしました。
大まかに説明すると次のようなことです。
・語学の準備
これは絶対に必要です。
観光ではなく、滞在するとなるとその国の言葉、それが無理ならば英語だけでも話せるようにしておくことは必須です。
片言でもその国の言葉が話せると、市民の方々と交流できるし生活もぐんと便利になります。
夫は大学で勉強するために行ったので、語学学校でマンツーマンレッスンを1年近く受けて、専門的な勉強に対応できるように準備をしました。
費用はかかりましたが、幅広い知識のあるインストラクターに恵まれ、かなり力をつけることができました。
私は勉強したり働いたりする予定がなかったので、特別な語学のレッスンは受けませんでした。
ただ、幸運にも基礎的な英会話はできたので、ラジオの英会話番組を聞いたり、英語ニュースを聞いたりして、聞き取りの力をつけるようにしました。
・その国の事情を調べる
これから行こうとする国はどんな国で、どんな習慣があるのか、医療事情はどうかなど分かる範囲で情報を収集することも大事です。
現在はインターネットを使えば、たいていのことは分かります。
図書館でその国を紹介している本を読むのも有効です。
もしできれば、その国へ行ったことのある人、前任者などに詳しい事情を聞くことは非常に役に立ちます。
私は乳飲み子を連れて行くことになっていたので、イギリスから来ている宣教師の奥様に、赤ちゃん用のミルクはあるか、オムツはどうなっているのかなど詳しく聞きました。
最初の子どもでもあったので、心配は尽きませんでした。
でもその奥様が言うには「心配ありません。イギリスにも赤ちゃんはいますから。」とのことでした。
この一言ですっかり気持ちが楽になったのを覚えています。
幸いにもこのころは、イギリスは外国人に非常に寛容で、外国人であっても赤ちゃんの医療費は無料だったので、とても助かりました。
・留守宅をどうするか決める
1年以上外国に行くとなると今まで住んでいた住まいや持ち物を整理しなければなりません。
この点については、海外勤務の多い会社では持ち物を借り上げ倉庫に保管してくれるところも多いです。
そうでない場合は、実家に預ける人もいます。
私たちは買い取りマンションに住んでいたのと、1年で帰ることが決まっていたので、両親にマンションの管理を任せて、家財道具もそのまま残しました。
・持って行くものを選別する
外国では手に入らないものはどうしても持って行かなくてはなりません。
差し当って日本語の辞書、日本語の本などは必要ですが、現在はネットで何でも用が足りるので、重い本を持参する必要はないでしょう。
現地で、子どもたちが日本語の勉強をするならば、教科書も必要です。
私の子どもはまだ乳児だったのでその必要はありませんでした。
衣類などは必要最小限にして、現地調達の方が安く済みます。
私は子どもの物だけはと思って1年分の衣類を持って行きましたが、イギリスの夏は寒くてほとんど夏服は必要ではなかったのでした。
持病がある人は現地のお医者さんに診てもらえるようになるまでの期間の薬は必要です。
夫は高血圧だったので、知り合いのお医者さんに多めの薬を処方してもらい、持って行きました。
イギリス生活で良かったこと
イギリス生活は一言でいえば「とても良かった」と思います。
そう思えた理由は次のようなことでした。
・イギリス人は外国人に対して、とても寛容で親切でした。
夫は研修中で、税金も払わないお客さんという立場だったのに、乳児の長男の医療費は無料で、私も授乳中だからということで、長男が1歳になるまでは医療費が無料でした。
外国人向けの英語教室も用意されていて、長男のベビーシッターまで付けてくれたので、私は無料で英会話を教えてもらうことができました。
私が何とか1年間イギリスで暮らすことができたのは、そこで習った英語力のおかげとも言えます。
・外国人だからというので嫌な思いをしたこともありませんでした。
日本では外国の人を見かけると、「あの人は外人よね。」とひそひそ話をする人がいますね。
お店でも西洋人がやってくると店員さんがあわてて、「誰か英語できる人いない。」なんて言って逃げ腰になっているのを見たこともあります。
イギリスにはインド、パキスタン、中国など世界各地から大勢の移民の人々が来ています。
ですから、外国人でも全く差別がなく、同じように話しかけてくれるので、いつも快適でした。
・イギリス人は友好的でした。
近所の人々も「あの人は日本人だから」といった偏見はまるでなく、隣人として受け入れてくれたので本当にありがたかったです。
アパートに住んでいる老婦人は「赤ちゃんのオムツは美しい、遠慮しないで一番上に干しなさい。」と自分専用の洗濯ロープを貸してくれました。
長男をおぶって道端で地図を見ていようものなら、必ず誰かが「どうしましたか?」と声をかけてくれました。
お店で、私の英語が拙いために欲しいものをうまく説明することができずにもたもたしていても、後ろに並んでいる人から、「早くしろ!」と怒鳴られたことなど一度もありませんでした。
・日本にいてはできない経験をすることができた。
これも貴重な体験でした。
赤ちゃん連れではありましたが、バッキンガム宮殿や大英博物館、エジンバラ城などに行きました。
湖水地方にバス旅行をしたこともありました。
実物を見るのは本当に貴重で楽しい思い出となりました。
でも、本当の意味で体験してみて良かったことは、ガイドブックやDVD で見ることができるようなイギリスの風景や観光地ではありませんでした。
イギリスの冬は夜が長いと言われますが、イギリスは緯度が高いので、10~1月には夜が本当に長くなります。
朝は8時頃まで明るくならないし、夕方3時にはまた暗くなってしまいます。
寒いし、暗いし心細いこと甚だしかったです。
でもこれが本当のイギリスの生活だということを実感することができました。
昔は、クリスマスは冬至の祝いに起源があるとも言われますが、寒く暗い冬もここで一段落後は春に向かうという希望が見えて来ることが重要だったのだと感じたわけです。
イギリス人の粘り強さは、そんな冬の寒さや暗い夜に負けない気力が原動力になっているのではないかと気付かされました。
ただ本で読んだだけではわからない体験をすることができたことは幸運でした。
・一般の市民の生活を垣間見ることができました。
イギリス人はとても合理的でした。
バスや電車の切符は○○までいくらと決まっていますが、いったん切符を買って乗ると、降りるときまで検札は来ません。
バスなら自己申告で乗り、降りるときは確認されることはありません。
でもキセルをするような人はいないそうです。
乗客を信用し、無駄を省いているのには感心しました。
家庭料理も、ごく質素で短時間で仕上げます。
缶詰のスープなどもどんどん使って奥さんが長時間台所に立つことはないようでした。
それでも、お料理はまずまずの味でした。
家庭に招かれると、料理に時間をかけない代わり、奥さんがピアノを弾いてくれたり、ご主人がエレクトーンを弾いて歓迎してくれたりしました。
日本ではお客様が来るとなると主婦が台所に入り切りというケースが多いですが、雲泥の差です。
私は食べ物ばかりに気を取られないイギリス式のやり方は素晴らしいと思います。
・英語力がついた
これは当然とも言えます。
何しろ朝から晩まで耳にするのは英語ばかり、英語を聞く力が付くのは当然です。
長く英語に接していると、わからない単語が出てきても当然のような気がして、慌てなくなりました。
夫と共にイギリス人のお友達の家に招かれて、しばし談笑して帰った後、「今日の話は何だったの。」と聞いてみると、夫も「実はよくわからなかったよ。」というようなこともありました。
ですから、英語力が付いたというより、わからなくても平然としていられる度胸がついたというべきかもしれません。
実際は肝心なことだけ聞き取れれば、他の話は聞き逃してもいいわけで、どこが重要かという判断ができるようになったことが大きかったです。
イギリス生活で困ったこと
イギリス生活は楽しいことが多かったですが、それでも困ったことはありました。
それは次のようなことです。
・英語が聞き取れない
英語については、基礎的な知識はありましたが、イギリス英語の発音には慣れていなかったため、初めのうちはほとんど聞き取れないので相当困りました。
特に電話がかかってくるとお手上げで、何が何だかさっぱりわからないので苦戦しました。
それでも毎日聞いていると少しずつ慣れて、1年たつうちにはかなり分かるようになりました。
日本の英語教育は主にアメリカ英語で行われているので、イギリス英語は難しかったのです。
現在でもイギリス英語を使って教えているテレビやラジオの語学番組は少ないですが、イギリス英語の番組をもう少し聞いておけばよかったのにと後悔しました。
・日本ほどサービスが良くない
イギリス全体が個々の生活を充実させることを目指しているので、日本が週休1日の時すでに週休2日になっており、商店は土日には休みのところがほとんどでした。
勤め人は9時~5時まで働くことが普通となっていました。
あるイギリス人の友人は5時には家に帰り食卓についているとまで言っていました。
ですから、週末には食料を買っておかないと、食べるものがなくなります。
水道や電気が故障しても、職人さんが5時には帰ってしまうためにすぐに修理に来てくれません。
イギリス人は「すぐに修理に来ないとはけしからん。」と言う人は一人もいません。
つまり、「私も5時に家に帰るのだから職人さんが5時に帰るのも当然。」と思っているからなのです。
日本に帰国してから、親しくしている電気屋さんにその話をしたら、「日本の電気屋がそんなことをしたら、すぐにつぶれますね。」と言っていました。
・気温が低い
これはイギリス人のせいではありませんが、日本の学校では「イギリスは海流の影響でいつも温暖です。」と習いました。
でも実際に行ってみると、温暖ではなく「いつも寒い」の方が正しいです。
一年中冬服を着ていましたし、冬は特に寒く水道管が2回も破裂したほどでした。
この年は特別寒かったそうですが、とにかくイギリス生活をするなら、寒さ対策は欠かせないことを実感しました。
帰国して考えたこと
楽しくもあり、苦労もありのイギリス暮らしでしたが、帰国してからはそれまでの考え方がずいぶん変わったことを感じています。
・日本人でも外国人でも同じ、差別や区別をするべきではないと思えるようになりました。
ですから、外国人の人が困っているのを見ると、つい「どうしましたか」と声をかけてしまうのです。
周りの人はそれを「余計なおせっかい」と言いますが、私がイギリスで受けた親切を思い出すと声をかけずにはいられないのです。
あるとき声をかけた中国人女性の様子がおかしいので、病院へ連れて行ったら鎖骨が折れていたこともありました。
以前だったら、「困っているかもしれないけれど、私は中国語ができないし、不法滞在している人かもしれない。」などと声をかけるのをためらったことでしょう。
・多様性を認めることができるようになりました。
日本にだけ住んでいた時はいろいろなことを、こうでなくてはならないと決めつけていましたが、そうではないかもしれないと思えるようになりました。
例えば、子育てについて日本では「母乳が一番」とか、「離乳食を食べている赤ちゃんに濃い味の物を与えてはいけない」とよく言われます。
私もそう思っていましたが、イギリスでは母乳にこだわる人はあまりいませんでした。
1歳前の赤ちゃんがチョコレートを食べているのも見かけました。
だからと言ってイギリスの赤ちゃんが不健康ということもありません。
単に習慣の違いで、多様性を認めることが重要だと思うのです。
私はイギリス生活を満喫して、帰国することができました。
日本という狭い国にだけいたのでは到底わからなかった新しい物の考え方を身に着けることができたことは本当に大きな収穫でした。
もしあの1年間がなかったら、本当に視野が狭く、融通も利かないままだったと思います。
若いときに海外で生活することはその後の人生を大きく変える飛躍のチャンスです。
もし海外赴任の機会があるなら、躊躇せずに行ってみることをお勧めしたいです。
まとめ
海外赴任が決まったら、周到に用意をし、海外生活の準備をしましょう。
外国に行ったら現地の人たちと交流し、日本では経験できないことを積極的にやってみましょう。
海外生活をすることは自分自身の飛躍につながります。
若い方々が、海外でたくさんのことを経験し、その後の生活にも活かすことを期待しています。
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